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VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2011年9月2日掲載

第34回 LTO-5とLTR-100HS (前編)

株式会社 朋栄アイ・ビー・イー 竹松 昇

 2016年3月末でD2 VTRの保守ができなくなる。このため、それまでに膨大な数のD2テープ上の映像を別の形に変換しないと、過去の映像資産を継承することができなくなる。D2テープの数は、キー局クラスでは数万本から10数万本規模と言われており、費用と時間の点で、非常に大きな課題だ。
 技術的に見ると、継承にはさまざまな方法が存在する。一つの方法は、別の種類のVTRテープにダビングする方法だ。テープからテープにタイムコードつきでダビングすることで、画質の若干の劣化は避けられないとしても、従来のワークフローで即利用可能な形で継承できる。課題もある。何年かした後に、そのVTRの保守ができなくなり、また別のテープに変換する必要がでてくると考えられる。この時に、また同じ作業を行わねばならない。特に、ダビング後の目視確認の手間が問題となる。また、映像制作全体でファイル化が進んでいく中、従来通りテープベースのままで良いかという懸念もある。新しいテープの費用や保管スペースも馬鹿にならない。
 このため、最近では、継承にあたりコンテンツの2次利用も考慮して、ファイル化するという選択が増えてきている。一つの理由は、ファイル化することで、その次への継承作業が容易に自動化できることだ。ファイルをコピーしたり保管したりする場合、実時間以下でのコピー作業や、ファイルが改変されていないか(こわれていないか)を例えばハッシュ値などの技術を使うことで自動検証することが容易にできる。また、ファイル化したファイルをノンリニア編集機で直接読み込むことで、取り込みや変換作業が不要となり、作業効率・費用削減の点で効果がある。何より、新しいテープで継承するより、ファイルで継承した方が費用を削減できるということになれば、過去映像の使用頻度から考えると、多くの場合、費用がかからない方を選択することになる。
 一方、ファイル化の課題もある。まずファイル化設備の費用がかかる。VTRの価格は近年かなり安価になってきたが、ファイル化のために、エンコーダ、サーバー、ストレージなどのシステムを構築するのにかなりの費用がかかってしまう。システム費用が高額だと、保守費用もそれなりの金額になるので、ランニングコストもかかってしまう。次に、ファイルを蓄積しておくメディアをどうするか、という課題がある。安価・高信頼性・長寿命という点がまず重要だが、読み書きの速度も課題となることがある。HD解像度での編集前の素材は、かなりの高ビットレートとなるためだ。さらに、再利用が容易か?という点にも気を配らねばならない。従来のVTRテープのワークフローと、新しいファイルベースのワークフローが混在する中で、最適解を考えねばならない。
 このように、テープへのダビング、ファイル化、それぞれメリットがあり、課題がある。いずれにしても、映像・音声品質を維持しつつ、再利用可能な形で、いかに低い費用で映像資産を継承するか?を追い求めることになる。
 株式会社朋栄は、ファイルベースの放送制作システム構築の一端を担うべく、MediaConciergeブランドの製品群を展開してきた。また、アイ・ビー・イーは、過去10年間にわたり、さまざまなアーカイブシステムの構築に携わってきた。この両社の技術とノウハウを融合し、ファイルベースでアーカイブ構築を強力に支援する製品としてLTR-100HS(図1)を開発した。

前編は、LTO-5について解説する。

図1. LTR-100HS外観(プロトタイプ)



LTO-5

(1)位置づけ

 アーカイブを進めるにあたり、まず保存メディアの選定が課題となる。保存メディア自体の費用、保管に必要なスペース、保存の手間、再利用時の手間などを考慮しなくてはならない。本誌5月号の記事「放送用記録メディアの動向」に最近の動向の解説があるが、データ保存用に開発されたLTO(Linear Tape Open)の最新技術LTO-5が、アーカイブ用途では最有力なメディアである。
 LTOは、IBM、HP、Quantumの3社が共同開発しているデータテープ技術で、多くのメーカーに技術がライセンス供与されており、業界標準となっている。2000年に200GBの容量を持つLTO-1が発表された後、2〜3年ごとに世代が更新されてきた。最新のLTO-5は2010年1月に発表され、2010年春からLTO-5を採用した製品が各メーカーから発表されつつある。

 

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(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー)
※本コラムは、放送技術 2010年8月号に掲載された「LTO-5 ビデオアーカイブレコーダー LTR-100HS」を改題、
一部変更・抜粋したものです。編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。

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