私とマルチメディアMPEGラボMXFラボ

TOP

VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2007年2月21日掲載

第25回 <屋外広告物としてのデジタル・サイネージのこれから>
    chapter 02 デジタル・サイネージはどうしたら屋外広告媒体になるのか

コラム執筆:株式会社シブヤテレビジョン 技術部
シブヤテレビジョン技術部について

前回ではデジタル・サイネージによる屋外広告媒体への利用は現在では難しい状況にあることを示しました。今回はこれから屋外広告媒体にはどのようなデジタル・サイネージ技術を求めているかを考えていきます。

■媒体数の増加
これは広告物に限った事ではありませんが、事業を行っていくうえでのコストの削減は必須になります。ただ、デジタル・サイネージを屋外広告媒体として導入する場合はこの問題がまず一番に取り上げられます。

前回「広告主」と「視聴者」の間で屋外におけるデジタル・サイネージへの認知度が低い事を取り上げましたが、新しい媒体を生み出すのに、「まずは数を増やす」というのが屋外広告媒体において大きなポイントになります。日本初の大型ビジョンである「新宿のアルタビジョン」が1980年に誕生してから30年近い年月が経っていますが、LEDビジョンが広告ビジネスとして活発になったのはここ10年以内でしょう。それまではそのオーナーである企業や商店のPRとして取り付けられるケースが多く、単体の広告媒体としてビジネスにはなっていませんでした。

現在、大型LEDビジョンがこうしてビジネスとして稼働できている理由として「数が増えた事により認知度が向上した」という事が理由の一つに挙げられます。つまり、数を増やさないことには媒体としての価値を挙げる事ができないのです。もしかしたら「デジタル地図案内板」も最初から100台近い端末を設置すれば新しい媒体として成功していたかもしれません。

■パーソナル媒体との比較
近年、携帯電話やPCのWEBサイトが媒体としての価値を上げてきました。渋谷の街中には大量の広告が氾濫しています。それにも関わらず、人々は自分の携帯にある情報を元に目的の場所へ行ったり、買い物をしたりします。クーポンの発行も「マクドナルド」や「ぐるなび」のように携帯を使用するケースも増えてきました。屋外広告媒体がそれらと共存するアイデアはいくつか実行されてきましたが、結局はパーソナル端末への誘導にしか過ぎません。屋外広告であれば単体での訴求効果が求められます。そこで、これからの屋外広告に求められる要素はユビキタスな発想と言えるのではないでしょうか。

携帯電話にしても、従来のタッチパネル式にしても、人が直接操作をする必要があります。そこで、SF映画のように、あるビジョンの前を通過すると、その人に適した広告が流れるような仕掛けなど、人がわざわざ操作をしなくても、消費者の求める情報が自動的に発信されるという仕組みが、不特定多数を対象とした屋外広告の新しい展開として期待されています。

■テクノロジーの発展と倫理的問題
先に述べたような技術は難しいかもしれませんが、不可能なことではありません。しかし、それらを実際に行うにはテクノロジー以前に大きな問題があります。「倫理的問題」です。ここ数年個人情報に対する意識が高まり、一般の人々は「個」の情報が流失してしまうことに嫌悪感を抱いています。そうなると、先ほどのように、媒体の前を通るだけで「個」を特定し、それに対する情報を発信することは倫理的に反してしまうのです。3D技術も同じような事が言えます。屋外での3Dビジョンというのも一部で開発が進んでいますが、屋外であるという事で、それにより交通事故の誘発を促すためなかなか踏み切れないのが現状です。

屋外広告物というものは、屋内広告物やパーソナル機器とは違って、テクノロジー、コスト、倫理的問題など、新しい媒体として発展するにはたくさんのハードルがあります。それらを全てクリアして初めてSF映画に出てくるような世界が生まれることでしょう。

(コラム記事/ シブヤテレビジョン 技術部)

製品・システム・技術に関するお問い合わせ