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VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2007年1月24日掲載

第21回 モバイル・マルチメディア放送の展望<その2>
    「マルチメディア放送を先取り!デジタルラジオの仕組み」

コラム執筆:株式会社エフエム東京 小田慎也
執筆者のプロフィール

デジタルラジオのシステムはISDB-Tsbと呼ばれています。sbとは"Sound Broadcast"を意味しますが、モバイルマルチメディア放送でもこのISDB-Tsbをベースとすることが提案されています。

ISDB-Tsbとは1セグメント、もしくは3セグメントの帯域で一つのTSを伝送するものです。1セグメント当たりの伝送容量は変調パラメータにもよりますが、330k〜440kbpsです。3セグメント放送はこの3倍の帯域です。

帯域の使用例を考えてみましょう。例えば簡易動画(H.264)に200kbps、音声(AACSBR)に64kbps使用すると仮定します。1セグメント放送の場合は各種制御情報を除き、データ放送に利用出来る帯域はせいぜい30k〜60kbps程度でしょう(1セグメント=330kbpsで計算)。すでに一般家庭にはメガ単位の回線が引かれている時代、また、携帯電話でも1Mbps相当の速度が出る時代に数10kbpsのデータ放送で果たして"マルチメディア放送"が実現出来るのでしょうか?同じ想定で計算すると3セグメント放送の場合は600kbps程度のデータ放送容量が使用出来ることになります。
FM文字多重放送が約7kbpsですから、新たなマルチメディア放送には最低でも3セグメント放送相当のデータ量が求められるのではないかと思います。

さらにISDB-Tsbには、連結送信という特徴的な技術があります。ISDB-Tは13セグメントの中の真ん中1セグメントを使用するのに対し、現在のデジタルラジオ放送は1セグメントを8つ繋いだ形の8セグメントの放送をしています。このような異なるTSを送るセグメントをぴったりくっつけて送信する事を連結送信と言います。


現在の免許人である、デジタルラジオ推進協会(DRP)の放送は、1セグメント放送×5、3セグメント放送×1の、合計6本のTSの中から希望のチャンネルを選択して視聴する仕組みになっています。ここが海外の方式である"MediaFLO"との最大の相違点と言ってもよいでしょう。受信機から見れば、6MHzの帯域を全て受信し、希望のチャンネルを抜き出すMediaFLOのシステムに比べて希望のセグメント(TS)を選び、そのセグメントのTSのみを抜き出すほうが消費電力などの面においても有利な面があると言われています。

連結送信は、複数のセグメントを隙間なく送るため、周波数利用効率の観点からも有効な方式です。送信機やアンテナも連結送信単位で一つ用意すればよく、経済効率も良いと言えるでしょう。

ただ、同じ連結送信の中にいる放送局は、すべて放送エリアが同じになる、という点に注意しなければならないでしょう。送信電力と送信機の位置により放送エリアが決まりますが、一つの連結送信全体で一つの送信機、一つの送信アンテナを使用するためすべて同じ放送エリアとなります。
現実にはアナログのFM放送などではアンテナ共用など、似たような運用はされているのでさほど珍しいことではありませんが、「○○の地域ではA局はよく聞こえるが、B局はノイズで聴こえない」といった話はなくなり、コンテンツの中身がより一層問われる時代になるでしょう。

 

(コラム記事/ エフエム東京 小田慎也)

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