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VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2007年11月21日掲載

第16回 著作権保護からセキュリティ用途まで〜電子透かしのご紹介
- 「技術概要〜静止画像の例」

コラム執筆:株式会社メディアグリッド 岡村一寛
執筆者のプロフィール

前回で述べたように、透かし技術は各メディアに依存し、様々な種類が存在します。以下では代表的な例として静止画像の透かし技術の概要をご紹介いたします。

前回のサンプル画像をご覧いただくとお判りの通り、人間の目では違いを認めることが難しいかと思います。透かし処理は画素単位で情報を書き換えます。普通の人間では画像情報の画素単位を認識することは困難です。画素の集合として認識するわけですから、その違いが認識できないことは当然です。ただし、画素単位での情報書き換えを著しく行えば、当然のことながらオリジナル画像との変化は認識出来るようになります。この情報の書き換え(変化の幅)の大きさ(差)を、「透かし強度」という表現をする場合が多いです。

この書き換え方法は、様々あります。画像には色、輝度、周波数…様々な要素が存在します。これらの要素を人間の視覚特性に即して書き換えを行なうことが透かし技術の基本的な考え方です。透かし技術を研究・開発している企業によって、このアルゴリズムは異なります。画像情報の要素の使い方によって効果も異なってきます。画像サイズ(解像度)の変更に耐えうるような技術、圧縮技術に耐えうるような技術、色調変化に耐えうるような技術、顧客の用件に合わせて、個々の要素の組み合わせにより情報書き込みを実現させています。

さて、透かし技術によって情報を書き込むという際に皆様から質問される1つとして「どのくらいの情報量が書き込めるのか?」というものです。前段で申しあげた通り、画素の書き換えで情報を表現するわけですから画素が多ければ多いほど、書き換えられる領域(量)が増えます。極端な表現をすれば大きい画像には大量な情報を埋め込むことが出来る訳です。しかし、画像領域全体を利用して情報を表現するとデメリットがあります。画像の一部分が欠損したら、情報の読取りが困難になってしまうということです。

様々な透かし技術の中でも、多くの顧客用件として画像の不正利用防止(抑止)という目的があります。この場合、透かし画像を不正に複製・加工しても埋め込められている情報が損失しないという要求が課せられます。画像の加工として考えられるものとして、サイズ変更、切り取り、圧縮、色調変更、回転…が挙げられます。このような加工に耐えうるには、1画像全体を利用した1の情報を埋め込んでしまうと目的は達成されません。よって、各透かし技術提供企業では、128or256ピクセル四方を1つの表現粋として、任意の情報を埋め込むという概して同様な仕様を定義しています。

たとえば、画像の左上から始まる128ピクセル四方の正四角形の中に、ある情報を埋め込みます。次の128ピクセル四方にも同様な情報を書き込みます。これを繰り返し、画像全体に同一面積、同一情報を連続的に処理することで、画像加工に耐えうる透かし処理を行なうという考え方があります。

図1:キャプション(仮)

図1:透かし技術の概要

 

この図のように、一定面積四方の情報表現域を連続処理することで、切り取りに対する耐性を伴うように工夫をしています。一般に128ピクセル以下では画像情報としてあまり意味をなさないと思われており、現在は128ピクセル四方の定義が多いように見受けられます。

上記のような例だけでなく、様々な工夫を用いて加工に対して情報が消失しないように配慮されているのが静止画像用の透かし技術となります。

■品質を維持する工夫
単純に画素に対して一律に情報書き換えを行なうと、実際にはかなり荒れた結果となってしまいます。では、どのような方法で画像品質の維持をしているか…これは各社の技術特徴であり、競争のポイントでもあります。
一般に、人間の目には視覚特性(Human Visual System)と言われる特徴が存在します。簡単に言えば、一色で塗られた画像に1つの異なる色の点があれば、誰にでもわかります。しかし、多種多様な色が存在する画像に1つだけ異なる色が足されると、違いを発見することは難しくなります。人間の目(知覚)は、物の大意をつかむ能力に長けていますが、細部の違いを即座に判断するには、当たり前ですがデジタル機器より劣ります。

1枚の写真の中で、比較的平坦な色/形状/周波数…とそうでない部分。この違いを自動的に把握し、画像内においても書き換え幅を動的に変化させることで画像品質を保持しながら情報を埋め込むことを行ないます。このような手法は各社独自の視覚特性分析による処理によって実装されているように見受けられ、技術的な差となっています。

このように述べた要素を活用し、現在ある透かし技術が提供されているわけですが、日々新しいアイデアで技術は改善されています。私が関わる技術においても目覚しい勢いで技術向上が達成されており驚きの多い分野です。過去に透かし技術を試された方も再度新しい技術を経験されるとその違いに驚かれることと思います。今後のビジネスの中で利用されるに十分な技術力が各社でも蓄えられているように感じます。

次回は、音声/動画に関する透かし技術の概要を書いていきます。

(コラム記事/メディアグリッド 岡村一寛)

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