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2007年10月25日掲載

第14回 コンテンツ制作のこれから
- 「奈良の地にある日本のオリジナル」

コラム執筆:株式会社イーディーエー 代表取締役 飯田和正
執筆者のプロフィール

昨年から今年にかけては、なぜか日本各地の神社や寺院に縁がある年だった。

どちらかといえば古き良きものに対して信仰深い私だが、50以上の神社や寺院を見て回ることは過去になかった。TV番組「オーラの泉」が大ヒットして、スピリチュアルという言葉がもてはやされているが、日本の「温故知新」の中に未来へのヒントがこれほど埋まっていたとは・・・。奈良の地で私は日本のオリジナルに触れる機会を与えてもらった。

昨年、奈良東大寺前奈良公園で行われた「十五夜の宴」というイベントに参加させてもらい、改めて日本の文化と歴史を見直す機会となった。「十五夜の宴」は、脈々と受け継がれてきた日本古来の観月の宴を音楽・演劇で楽しもうと2003年より「らほつ朋の会」の主催で行われている。

2006年の参加アーティストはビックリするほど豪華だ。UA(シンガーソングライター)、朝崎郁恵(奄美島唄継承の第一人唄者)、河瀬直美(映画監督)、南流石(「おしりかじり虫」振付)といった、今の世をパワフルにリードする女性たちが盛り上げたのだ。
2006十五夜の宴1

写真1:「2006十五夜の宴」風景 河瀬直美映像作品上映の様子

彼女たちは私から見てビジネスとしてのステージではなく、楽しむことをテーマとして直感的にこのイベントに参加しているように思えた。そして彼女たちに話を聞くと、「日本の文化を多くの人々に発信したい。それが今、とても重要な事なんです」と口を揃えて言うのだ。アーティストであるがゆえ、彼女たちは今時代が求めるもの、必要としているものを奈良の地で敏感に感じ取っているようだった。

私にとって奈良は修学旅行で行って以来だったのでどこもかしこも新鮮に感じたが、どちらかというと文化遺産もさることながら、奈良の情緒に酔いしれた。文化遺産の都市「京都」とどうしても比べてしまうが、奈良は京都と違い、良い意味で日本の懐かしい風景があるように感じた。ぜひみなさんも機会があれば、京都から奈良にご面倒でも足を運んでいただきたい。まるで平城京ができた1300年前と何一つ変わらないかのごとく時代が流れ、その田園風景の中に日本文化の基礎となる寺院が数多く広がっていた。

TV番組でも占いやスピリチュアルが人気を博しているが、時代が、日本の人々が目に見えないものにすがっている感が否めない。そんな私も、その大勢の中の一人である。東大寺・興福寺・西大寺・新薬師寺の住職の方々ともお話をさせていただく機会があり、本当に感銘を受けるところがあった。今の現代に必要なことを本音で説いていただいた時は、「この方々は悟りを開いているな〜」と素直に感じてしまったものだ。

2006十五夜の宴1

写真2:「2006十五夜の宴」風景 日本古来の雅楽と光が織り成すステージ

時代は今、なにを求めているのか。

企画のお仕事をされている方は、いつもこの一点に全神経を集中させていることだろう。私も偉そうなことを言える人間ではないが、いつの時代も「これじゃいけない」という防衛本能的な危機感から物事は生まれているんじゃないのか?と感じる時がある。

1300年前の風景が残る奈良で、私も「これじゃいけない」モードにギアが入ってしまった。

グローバルスタンダードといわれ、あたかも世界が右向けば世界中の人間が右を向かなければいけないような自由束縛の現代、みんながみんなに合わせる世界で、かたくなにオリジナルを守る人々に私は賞賛の拍手を送りたい。そして、私たちにそれを気づかせてくれる場所「奈良」の存在もまたしかり。

時代が求めるエンターテインメントの発信場所は、遠く海を渡って見つけたものでは無く、いつも足元に咲いている小花のような存在なのかもしれないと近頃思うのである。

(コラム記事/イーディーエー 飯田和正)

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