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VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2007年6月13日掲載

第3回 MPEG-2 TSの概要 前編

前回はNAB2007レポートを掲載したが、今回は第1回に引きつづき、各ファイルフォーマットの詳細について筆を進めていく。第3回では数あるファイルフォーマットの中からMPEG-2 TSをクローズアップする。

■ MPEG-2 TS概要

MPEG-2 TS(トランスポートストリーム)とは、映像と音声の多重化方式を定義したものである。 ISO/IECとITU-Tの合同規格で、ISO/IECでは「13818-1:2000」、ITU-T勧告では「H.222.0」として規格化されている。

我々が一般的に呼ぶ「映像」とは、動画と音声が一つにまとまったものを指し(※1)動画と音声を一つにまとめたものを「コンテナ」、「ラッパー」と呼ぶ、と第1回で解説した通りであるが、 MPEG-2 TSもコンテナに該当するものとなる(特にMPEGでは、「システム」とも呼ぶ)。

※ 1:音声、動画が別となる場合も有る。MXFのOP-Atom形式やRTP/RTSPなど)

MPEG-2 TSとPSの違い

ISO/IEC 13818-1,ITU-T Rec. H.222.0では「MPEG-2 PS(プログラムストリーム)」も定義されている。MPEG-2 PSについては次回以降で解説するが、MPEG-2 TSと同じくコンテナに該当するものである。MPEG-2 TSとMPEG-2 PSの違いは以下となる。

MPEG-2 PSは1つの映像しか扱えないが、MPEG-2 TSは複数の映像を1つのストリームで扱うことができる。
録画ビデオとテレビ放送のイメージで考えると分かりやすい。録画ビデオは 1つの番組しか見る事が出来ないが、TV放送ではチャンネルを変更すると色々な番組を見ることができる(厳密にはMPEG-2 PSでも複数の動画、音声を内包する事が可能であるが、あくまで1つの映像として扱われる)。

図 1. MPEG-2 PSとMPEG-2 TSの概念図

 

MPEG-2 PSは、データ欠落などエラーのない蓄積メディア(DVD、HDDなど)向けに、MPEG-2 TSは衛星、地上波、IP回線など多少エラーがあるかもしれない回線を使っての遠隔地への伝送や放送を目的として設計されている。

広域伝送では多くの伝送機材を経由するためデータ欠落が発生しやすいが、MPEG-2 TSでは小規模なデータエラーが発生してもエラーの検出が可能となるように設計されている(エラー訂正が出来るという意味ではなく検出ができるというもので、実際のエラー訂正については、送出、伝送装置によってそれぞれ異なる)。

また、仮にエラーが発生しても、受信・再生を止めずに継続できるような仕組になっている。MPEG-2 TSには再生する為に必要な情報以外の情報が含まれるため、放送素材として保存している場合をのぞき、容量制限がある蓄積メディア向けに使用される事はまれである。

MPEG-2 TSは内包する映像の形式との依存関係がない。
内包する映像の形式に取り決めはなく、一般的に内包されるMPEG-2 VideoやMPEG-1 Audio以外にもMPEG-4 AVC/H.264や、映像以外のデータ形式を内包させる事ができる。

以上の違いにより、DVDやPC上でのテレビ録画などではMPEG-2 PS、放送や通信ではMPEG-2 TSが主に利用される。

MPEG-2 TSの基本部分

MPEG-2 TSは188バイト単位のデータとなる。この 188バイト単位のデータを「TSパケット」と呼ぶ(※ 2)。内包する動画、音声データを最大 184バイト単位で分割し、TSヘッダと呼ばれるデータを付加し188バイトとしたものとなる(※ 2:ISO/IEC 13818-1,ITU-T Rec. H.222.0ではMPEG-2 TSパケットは188バイトであると規定されているが、利便性を高める為に拡張データを付加する場合もある。代表的なものとして、 FEC(Forward Error Correction: 順方向誤り訂正 )があり、受信側が行うエラー訂正の為の情報を付加したものとなる。FECを付加したTSパケットのサイズは、204バイトとなる。MPEG-2 TS送信、伝送、受信機も188バイト以外のMPEG-2 TSパケットが扱えるよう設計されているものが多い)。


図2.MPEG-2 TSのデータ形式

 

MPEG-2 TSヘッダは4バイトで表され、各バイト、ビットが示す意味は以下の通りとなる。


図3.MPEG-2 TSのヘッダの構造


TSパケットの種類が異なるとPIDも異なる。PIDにより、あるTSパケットがどのような意味を持つのかを簡単に見分けることができる。

各要素のうち、重要な項目は以下となる。

・同期ワード

必ず「 0x47」となり、MPEG-2 TSパケットの先頭である事を表す。受信、再生機は、この値があるデータ位置を MPEG-2 TSパケットの先頭として処理する。

・PID

この MPEG-2 TSパケットがどのようなデータを内包しているのかを表すパケット識別子。PAT/PMT(詳細後述)で記述されるパケット識別子と同じもの。

・巡回カウンター

MPEG-2 TSパケットに欠落が無いか検査する為のカウンター。0〜15の値を取り、MPEG-2 TSパケット毎に1ずつ増えていく。ただし後述するアダプテーションフィールドのみのペイロードが存在しない MPEG-2 TSパケットの場合はこのカウンターは常に0となる。また、 TSパケットが同じ内容となる「連送パケット」の場合、巡回カウンターは増加せず、前回と同じカウンター値となる。連送パケットは 2回まで許可されている。


図4.巡回カウンターの役割

 

次回につづく。

(コラム記事/ (株)アイ・ビー・イー 先端システム研究所)

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